Interview

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ヴァイオリニスト 宮陽江さん 後編

 

スイス・ジュネーブを拠点に、国際的に活動するバイオリニスト、宮陽江さん。
子供の頃からバイオリン一筋。思春期の頃も今も、気が付くとクラシックの作曲家のことで頭がいっぱいになっているという筋金いりの音楽家。彼女のバイオリン人生と、音楽への思いを伺った。

 

【後編】

●総合芸術を目指し、衣装も公演のテーマにあわせて作る


ロズリン : 芸術家の方は、その作品だけではなく、作品を創りあげていくその姿全体がすでに芸術だと思っているんです。たとえば100歳をとうに超える美術家の篠田桃紅さん、彼女が墨をすり、大きな紙の上で描く。彼女の立ち居振る舞いのすべてが芸術で、素晴らしい。ですから、さきほど宮崎さんが公演は演奏だけではなく、総合芸術を目指しているとお聞きして、非常に共感しました。演奏する女性は衣装も非常に大切ですよね。


宮 : そうなんです。実は私の衣装は以前、ロズリンさんのこのブログにも登場されている、ウェディングドレスデザイナーの花嶋千賀さんが担当してくれているんです。
彼女と出会ったのは10年以上前になります。当時の私は、自分の演奏や公演ごとのテーマに必要な衣装を探し、いろんなお店や人にコンタクトをとって探したのですが、ぴんとくるものがなくて。ある日、美容院で雑誌を見ていた時に、彼女の作品を見て、「あ、この方だ」と。すぐに彼女のアトリエに電話をさせていただき、飛び込みで突撃したんです(笑)。
それ以来のおつきあいで、公演のたびにテーマからご相談し、作っていただいています。


ロズリン : 彼女の衣装は本当に素敵ですね。宮さんのコンサートに伺った時の衣装も、とても印象に残っています。音楽もドレスもとてもドラマティックだった。


宮 : ありがとうございます。よく生地からこだわって、織元までいって作っていただくんですが、ロズリンさんが来てくださった時の衣装もそう。結んでいた5色のリボンは絽の着物の生地で、五泉駒絽という絹を、そのために織っていただいたんです。透け感や太さなど細かいところまで非常にこだわりました。


ロズリン : それほどこだわって作っていたのですか。本当にすごいですね。
総合芸術という意味では、衣装のほか、やってみたいことはありますか?


宮 : はい。いずれバレリーナの方と舞台で共演したいと思っています。


ロズリン : おもしろそう。ぜひ見てみたいです。


●今年はバロックのコンサートにチャレンジする予定

 


ロズリン : 話はかわりますが、舞台の上で大失敗したことや、ネズミが舞台を走ったみたいな、ハプニングが起きたことはありますか?


宮 : ネズミには会ったことはないですが(笑)、本番の前に通しで練習する「ゲネプロ」で、2回弦が切れてしまったことがあります。1回切れることはたまにあるので、サブのバイオリンを持って行っていますが、この時は一度バイオリンを変えたら、また切れてしまって。ちゃんとメンテナンスもしていたし、時期も悪くなかったんですが驚きましたね。本番ではなく助かりました。


ロズリン : それが本番だとどうするんですか?


宮 : オーケストラとの共演の場合は、コンサートマスターの方からバイオリンをお借りして弾き続けることになりますね。


ロズリン : それは大変(笑)。弦は自分ではるんですか?


宮 : はい。予備で少し使い込んだものを持ち歩いていて、それをはりますね。


ロズリン : そうなんですね。私がステージを見ていて危ないと思うのが、楽譜。まとまって何ページかめくってしまったりしないのかしらとか(笑)。そういえば、この間知ったんですが、今度、演奏中の楽譜も、タブレット端末でできるようになるそうですね。合理的ですが、電波の状態とかフリーズしたりしないんですかね。

 

 

宮 : 足で操作するようですけどね。どうなんでしょう。楽譜といえば、一度ハプニングありました。基本的に暗譜しているのですが、楽譜は万が一の時のためにおいているんですね。ある無伴奏の大変な難曲で、メロディーが途切れない⾧い曲を弾く際、5枚ぐらいつなげた⾧い楽譜を作って、それを公演の際にスタッフが譜面台に置いてくれたのですが、演奏開始後に何か変だなと思ったら、上下が逆さだったんです。「あ、もうこれは見てはいけない」と。(笑)

そのまま暗譜で弾き切りましたが、あの時は弾きながらとてもびっくりしました。


ロズリン : それは恐ろしいです・・・ちなみに、宮さんは作曲もされますか?


宮 : はい。朝目覚めたときに聞こえてくる音をかきとめ、作曲しています。CD も出させていただいてるんですよ。


ロズリン : 聞いてみたいですね。教えることにも興味はありますか?


宮 : 大好きです。実はスイスで教育過程をとったので、ディプロマを持っているんですよ。でもツアーで移動していることが多いので、責任を持って生徒さんを見ることは今はまだできないので、いずれやらせていただきいと思ています。


ロズリン : バイオリンのほかに趣味はありますか?


宮 : すべてのことが音楽に結びつくというか、バイオリンが趣味と実益をかねているというか、音楽に浴することに常に飢えているので弾かないと干からびちゃうんです。


ロズリン : 練習は多い時はどのぐらいされますか?


宮 : 時間がとれる時は16時間とか。弾いていない時も、その時に取り組んでいる作曲家のことで頭がいっぱいです。思春期の頃も、ベートーヴェンの曲を弾いている時は、彼の耳が聞こえなくなったことで頭がいっぱいになったりしてましたね。なんというか、クラシックのおじさまたちのことが、昔も今も常に頭にある感じです(笑)。ワインを飲んでいても、彼らはどんなワインを飲んでいただろうなどと気になって仕方ないです。

 


ロズリン : 本当にバイオリンとクラシックがお好きなのね。


宮 : はい。あとは比較文化、という観点でも興味があります。私は今は日本人ですが、ヴァイオリンという楽器も元をたどると東洋の楽器から進化したもの。その意味では、異文化に見えつつも本質は同源なのではという考え方から、今後も音楽を通して、そこに流れるエネルギーと文化の本質を追求していきたいと思っています。


ロズリン : それはいいですね。今後はどんなことにチャレンジしたいですか?


宮 : 今年はバロックに取り組むコンサートを7月と12月に東京で行います。


ロズリン : バロックは大好きです。ある意味、バロックは完成された世界ですね。


宮 : はい。その通りだと思います。現代はバロックを演奏する人が増えていますが、一人ひとりがどういうバロックを弾くのか問いかけられている大変な時代だと思っています。一般にいうピリオド楽器は、モダン楽器との構造の違いから奏法も自ずと変わってきます。弦についてだけでも、今の弦はガットの表面にスチールが巻いてありますが、バロックのものはガットがむき出しですので、音が自然な生の音というか、牧歌的な親しみやすい音色になります。弓の形も違うし、ボディの構造も強度も仕様も違う。バロックを演奏する時にバロックバイオリンを使うかどうかは人によりますが、私は今どうしようかと考え中で、来ていただいてのお楽しみということになりそうです。


ロズリン : ぜひ伺いたいです。楽しみですね。

最後に一つ、質問します。私は猫が好きなんですが、宮さんは動物は飼ったりしてますか?


宮 : 家を空けることが多いので難しいですね。でも近所の親類が動物がとても好きで、おうちに犬や猫が必ずいる状況なので、私もそこにいくとかわいがっていますよ。


ロズリン : 今度ジュネーブに行くことがあったらぜひお邪魔したいです(笑)


宮 : ぜひ! お待ちしてます。

 

 

 

〜宮陽江さんコンサート情報〜

URL:http://www.yoe.jp/topics.html

 

■宮陽江 山口裕子  ヴァイオリンとハープ 響きあう弦〜名小品集〜 

 

[ 札幌公演] 2 0 1 8 年7 月6 日( 金)1 8 :3 0 開場/ 19 : 00 開演
六花亭札幌本店10 F きたこぶしホール


[ 旭川公演] 2 0 1 8 年7 月8 日( 日)1 4 :3 0 開場/ 15 : 00 開演
旭川 島田音楽堂

 

[帯広公演] 2018 年7 月10 日(火)18:00 開場/18:30 開演
とかちプラザ・レインボーホール

 

■宮陽江 バロックへの誘い〜調和と創意の試み〜 vol.1

[東京公演] 2018年7月24日(火)18:30開場/19:00開演
東京オペラシティ B1F リサイタルホール

 


【宮陽江さんプロフィール】
ニューヨーク州イタカ市生まれ、幼少期をパリにて過ごし、3歳よりヴァイオリンを始め
る。桐朋学園高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学音楽学部演奏学科卒業。その間、堀正
文、山口裕之、江戸純子各氏に師事。同大学を卒業と同時に全額奨学金を得て米国タング
ルウッド音楽祭(小澤征爾監修)に参加。後、ジュネーヴ高等音楽院に留学、名匠ジャン=
ピエール・ヴァレーズ氏に師事。在学中、室内楽をガボール・タカーチ、モダン・バロッ
ク両楽器をハンス=ハインツ・シュネーベルガー氏の下で学ぶ。1997 年、同音楽院をプル
ミエ・プリ(一等賞)にて卒業。
これまでにスイス、フランス、スペイン、オーストリアなど、ヨーロッパ各地での演奏会、
国際音楽祭に多数出演、また、ソリストとして、札幌交響楽団、読売日本交響楽団、北東
ドイツ管弦楽団、スロヴァキアフィルハーモニー管弦楽団、デュッセルドルフ管弦楽団な
どと共演を果たす。現在は国内外問わず幅広く音楽活動を展開。音楽文化の普及・発展に
精力的に取り組んでいる。

【感想】
音楽をはじめとした芸術は、その作品自体が完成品というよりも、演奏するアーティスト
の生き様や表現している姿、そういったもの全てが作用しあう「総合芸術」になって初め
て完成するもの、という宮さんの価値観にとても共感しました。お酒を飲んでいるとき
でも作曲家や音楽のことを考えてしまう…という宮さん。日常生活のそういった小さな
こと全てが大きな舞台で表現され、素晴らしい演奏につながっているのだと思います。
7 月・12 月のバロックコンサートはわたしも是非伺いたいです。今後の宮さんのご活躍
を楽しみにしています!



Profile

日本で人生の半分以上を暮らし、動物(特にネコ)と自然、最近はゴルフも愛する、心優しきオーストラリア人。
ワインなら何杯でも?いける口です♪

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