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RICCI EVERYDAY COO 仲本千津さん 後編

 

アフリカン・プリントの布地に魅せられたRICCI EVERYDAYのCOO仲本千津さん。
ウガンダの女性の雇用を創出するために現地でブランドを立ち上げ、独特なプリントを使用したバッグやトラベルアイテムなどを販売しています。現在は日本の大手百貨店のポップアップストアや自社オンラインストアなどを中心に展開。

後編では、事業を立ち上げる際のエピソードや今後の夢について語っていただきました。

 

 

日本で営業を担当する母との2人3脚

 

ロズリン:ウガンダのプリント生地とテーラーリング文化に目をつけて、どこからビジネスにつなげる行動をおこしましたか?

 

仲  本:当初は洋服を作ることも視野にいれましたが、日本人にはこの原色の大柄なプリントは派手すぎるかもしれないと思いました。

そこでファッションのワンポイントとしてなら取り入れやすいだろうと、バッグを作ることにしたのです。そして実際にバッグを作ってもらうスタッフを確保しようと、現地駐在の方や青年海外協力隊の方に上手なテーラーさんがいないか聞いて回りました。せっかくだから優秀な人を採用したいと思って。事業を興すなら現地の女性の雇用創出に貢献したいと考えていましたが、雇ってみたら3人とも皆シングルマザーで驚きました。

一人はミシンが上手と評判だった女性。もう一人は青年海外協力隊が提供する職業訓練で皮革の縫製を習得した女性、そしてもう一人はテーラーの能力はゼロでしたが、やる気があって、ビジネスセンスのある4人の子供を育てている女性でした。

 

 

ロズリン:ビジネスセンスというと?

 

仲  本:彼女は友人の知り合いでした。夫と離婚した後、何も仕事がなかったので、まず道端でB級グルメのような食べ物を売り、お金をためたんです。そのお金で土地を借りて、キャッサバといった芋などを作り自給自足の生活を始めました。さらに今度は豚を育て、業者に売り始めたんです。豚を一頭売ると、子供の1学期分の学費ぐらいのお金になるそうで、しかも豚は一度に9匹ぐらい生むほど繁殖能力が高い。そこで彼女は豚を育てては売って授業料を払い、また育てては売ってを繰り返し、お金を生み出していました。教育を全く受けていなかった彼女ですが、ここまでうまく回してこれたのは、彼女にビジネスセンスが元来あったからだろうと思ったんです。

 

ロズリン:たくましい人ですね。当初はその3人と仲本さんで始めたんですね。

 

仲  本:はい。私がデザインしたバッグのサンプルを作ることから始めました。作っては直し、また作っては直し、何十個サンプルを作ったか分かりません。納得のいく形のものを模索しながら、とにかく製作する日々が続きました。

一方で、日本で販売してくれる人を探そうと思い、母に「今度こういうビジネスをしたい」という話をして状況を伝えたんです。すると、彼女が日本での販売を引き受けてくれるというんですよ。それまで、アフリカン・プリントで洋服を作ってはLINEで写真を送るなどして、現地のプリントの素晴らしさを伝えてはいたんですが、簡単に引き受けてくれたのにはびっくりしました。母は専業主婦でビジネス経験ゼロだったのですが、4人の子供を育てる中で、PTAの活動などを通じて地元のネットワークを築いたりと、コミュニケーション能力は高い人だなと日頃から感じていました。でもまさか、地元の伊勢丹で総合案内の受付の方にいきなり「このバッグを売りたいのでバイヤーを紹介してください」と営業をかけるとは思いませんでしたが。その受付の方がいい方でバイヤーに繋げてくださり、幸運にも初めてのポップアップストアの開設が決まりました。

 

 

ロズリン:それは行動力があって頼もしいですね。

 

仲  本:はい。でも当初はお店側もそんなに期待してなかったようです。納品数は20個ぐらいでと言われていたんですが、事前に作成したプレスリリースに目をとめた地元のテレビ局が番組内で紹介してくれたことで、初日にあっという間に完売してしまいました。大急ぎで在庫をかき集めるなど、大騒ぎになりました。

 

ロズリン:すごいスタートですね。そこから徐々に取り扱いも増えて、今は数十か所でポップアップストアを開設し、ネット販売もされていますね。異国で起業することはとても勇気が必要だったと思いますが、お金も大変でしょう?

 

仲  本:私はアフリカで自分の力を試してみたかったんです。収入面はなかなか大変ですが、いろいろな経験をさせてもらっている勉強代とも思っています。

 

ロズリン:これまで特に苦労したことは何ですか?

 

仲  本:たとえばウガンダではよく停電があるので、それで生産計画が狂い納品に間に合わないかもしれないという危機に何度か直面しました。また業者によるストライキで材料が手に入らないとか、日本のように予定通りに物事が運ばないことが多々あります。

 

ロズリン:現地の女性を雇って、大変だったことは? ウガンダの働き方などもあるでしょうから、そのあたりはどうですか?

 

仲  本:小さな苦労はありますが、基本的にはそんなに大変と思うことはありません。それに彼女たちは、これまでずっと自分たちのやり方で働いてきたので、いきなり私がそれを変えようとしても難しいと思うんです。例えば、何も連絡せずに遅刻をする人が現れた場合、二度と絶対に遅刻しないでと言ってもそれは難しいわけで。こちらはインフラが弱く雨が降ればすぐに大渋滞になりますし、そういう環境で生活している以上、遅刻をゼロにするというのは不可能に近いです。とはいえ見過ごすわけにはいかないので、例えば事前に連絡することを徹底したり、遅れてきた分、残って仕事をしてもらったりなどして調整しています。でも彼女たちは本当によくやってくれていて、私は心から尊敬しています。ブランドをスタートした当初は私も経済状況が苦しく、バッグ1つにつきいくらという出来高払いでしか彼女たちを雇えず、彼女たちも生活をしていくのは大変だったと思います。でもその時期を共に乗り越えてくれたことに非常に感謝しており、今はきちんと毎月決まった額をお支払いし、彼女たちの生活を支えていこうと考えています。

 

 

ロズリン:バッグを見てもとてもお仕事が丁寧ですよね。ただ、いやな質問になりますが、このビジネスは他の方にすぐに真似されないでしょうか?

 

仲  本:簡単にまねできると思います(笑)。使っている布地はマーケットで誰でも買えますし、バッグのデザイン自体はシンプルですし。でも、たとえ中国などで同じものを大量生産したとしても、私たちのバッグには、ものづくりのSTORYが付加価値となってついてきます。〇〇という人が丁寧に作ったという生産背景があり、ストーリーでは負けない自信があります。そのうち「これはスーザンが作りました」というタグのようなものを作り、より生産者の顔の見えるものづくりを実践していきたいと思っています。

 

アフリカで暮らし、完成された土地だと印象が変わった

 

ロズリン:アフリカで暮らしてビジネスをやってみて、アフリカへの思いは変わりましたか?

 

仲  本:そうですね。アフリカ大陸に来るまでは貧困や紛争というイメージが強かったのですが、それはほんの一部であり、実は美しい景色やエネルギッシュな人々がいる魅力に溢れた場所であるとわかりました。そして昔は自分が貧困のある現状を変えたいという青臭い理想がありましたが、今はほかの国の人たちがいろいろ手を加えなくても、彼らには彼らなりの幸せに生きていくやり方があるのだと思うようになりました。変わるべきは先進国側。いつまでも援助という一辺倒ではなく、より対等に共に成長していく方法があるのではないかと考えています。私の会社でいえば、彼女たちがいなければ、いくら私が仕事をとっても製品は生み出されないですし、逆に私が仕事をとってこなければ彼女たちにはお金は入らない。今は共依存かつ対等な関係になっており、それは私にとって理想的な形と言えます。

 

ロズリン:これからビジネスをどんな風にしていきたいですか?もっと大きな工房を作って、もっといろんな国に販路を広げるとか?

 

 

仲  本:そういうやり方もありますが、それだと今のように一人一人と会話をしながら、きちんと接することができなくなると思うんです。生活や家族のことをざっくばらんに話せて、しかも人間として楽しくつきあえるような、そういう関係性はいつまでも保っていきたいなと。それができるのは、雇用人数が30人ぐらいまでかなと思っています。これまで働く機会を得られず、社会的に疎外されてきた人たち、中でも宝の原石のような才能を持った女性たちを、今後も積極的に雇用していきたいと思っています。それから北部に生産拠点を持ちたいと思っているんです。

 

ロズリン:それはなぜですか? 

 

仲  本:ウガンダ北部は、2006年まで内戦状態にありました。その際、誘拐されて強制的に兵士にさせられた子供たちがたくさんいるんです。彼らは薬や暴力で大人たちに支配され、もとのコミュニティーに戻れないように、親を殺すことを強いられるなど、長い人で10年以上、過酷な環境に置かれ本当にひどい目に遭わされてきました。そういう人が国際援助機関に保護されても、トラウマなどで普通の生活に戻ることはとても難しいんですね。彼らに対して、メンタルケアと職業訓練を提供している日本のNGO団体の施設がウガンダ北部にあり、できたらそこの団体とコラボし、卒業生を雇用できたらと考えています。

 

ロズリン:素晴らしい考えです。今、仲本さんの毎日はどんな感じですか?

 

仲  本:ウガンダと日本と年間を通じて行ったり来たりしています。ウガンダでは、工房だけでなく、バッグはもちろん雑貨などのちょっと気の利いたおみやげを売っているお店も運営しているので、ほぼ毎日両方に顔を出すようにし、スタッフに声がけをしています。生産状況などチェックをしたり、お役所に行って対応したり、ローカルマーケットで生地の仕入れをしたり、幅広い業務に日々追われています。

 

ロズリン:生地は注文ですか?

 

仲  本:いいえ。マーケットにあるものを一定量だけ購入しています。そのため人気があった布をまた買いに行こうと思ってももうなかったり。本当に一期一会なんです。今サイトで売っている同じ柄のバッグがまた出るとは限らないんです。

 

ロズリン:柄がとてもおもしろいですよね。

 

仲  本:はい。このプリント生地自体はウガンダで生産されておらず、主にコンゴやガーナ、ナイジェリアから輸入されています。柄は、幾何学模様や日常のもの、たとえばお魚や果物、ドルマークなど、いろんなものがモチーフになっていて、おもしろいですね。

 

ロズリン:お忙しいと思いますが、休日は何をされてますか?

 

仲  本:実は無趣味なのが私の悩みでして(笑)。休日も仕事をしてしまうことが多いですが、犬と遊んだり、本を読んだり。でも最近乗馬を始めました。ちなみに現地の方は日曜日は教会に家族でいきます。まるでカラオケ大会みたいに盛り上がるんですよ。リードボーカルの方にあわせて、みんなで聖歌を歌って踊るんです。

 

ロズリン:ああそうですか。ぜひ見てみたいです。

 

仲  本:また機会があったらぜひアフリカにいらしてください。

 

 

 

インタビュー感想>

 東北の震災をきっかけに、人生における大きな決断を下し、方向転換をはかった仲本さん。自身の夢を叶えるためとはいえ、現地で単身ビジネスを立ち上げることは非常に困難が多かったのではと思います。

ウガンダのありのままを受け入れ、ご自身も楽しみながら取り組んでいるからこそ、そこに共感する方も多いのでしょう。社会的に疎外された状況の人々を積極的に雇用しようという姿勢も素晴らしいです。今後も母娘二人三脚で、ウガンダと日本を結ぶ懸け橋であり続けてほしいですね!



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日本で人生の半分以上を暮らし、動物(特にネコ)と自然、最近はゴルフも愛する、心優しきオーストラリア人。
ワインなら何杯でも?いける口です♪

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