Interview

インタビュー一覧

日本歯科衛生士会会長 武井 典子さん 後編

 

高齢化の進展に伴い、地域包括ケアシステムの構築が急がれる中、地域で多職種と連携して口から食べる機能を維持し、低栄養や誤嚥性肺炎を予防するための人材育成に奔走する日本歯科衛生士会会長の武井典子先生を迎えての後編です。

 

 

社会ニーズに対応できる歯科衛生士の育成に注力

 

ロズリン:歯科衛生士が、入院患者、さらには在宅療養者や要介護高齢者等の口から食べる機能を維持し、低栄養や誤嚥性肺炎を予防する等の口腔衛生管理・口腔機能管理を担うためには、関連する分野の最新情報を得ていることが必要だと思います。

 

 

武井:そうなんです。現在、歯科衛生士になるためには3年間以上の教育が必要です。一方、歯科医療を取り巻く環境は、大変早いスピードで変化していますので、学校教育だけでは限界があります。


たとえば、診療室に抗がん剤治療を受けており、口腔粘膜炎に苦しむ患者さんが、口の中が痛くて食事ができないと訴えて来院しても、「がん患者さんはお断り」との事例があることを、がん患者さんから伺ったことがあります。

 

これは、数年前までは、がん患者さんへの対応についての歯科衛生士教育がなされていなかったことに起因します。近年では、診療室へ当たり前のようにがん患者さんが来院する時代です。しっかりとした生涯研修が重要です。

 

ロズリン:歯科衛生士の知識や技術の幅を広げていこうということですね。

 

 

武井:近年、口腔と全身の健康との関連については、毎年、新知見が示されています。従って、歯科衛生士の免許を持って仕事をしていても、研修や書籍を通して積極的に情報収集しなければ、新しい知識や技術が不足してしまいます。

 

そこで今後は、都道府歯科衛生士会の生涯研修をさらに強化して参りたいと考えています。歯科診療所で働いている歯科衛生士は、今、どのような知識や技術を持っている必要があるかを常に考えて必要な研修を企画・実施して行くことが大切です。

 

さらに本会としては、都道府県歯科衛生士会における充実した研修を行うための研修テキストの作製やリーダー研修等を行って参りたいと考えております。そのリーダーによる新人歯科衛生士研修、地域ケア会議におけるフレイル予防の助言者研修、災害支援研修等が都道府県から支部に向け実践されることを願っております。

 

ロズリン:超高齢社会においては、介護予防やフレイル予防等を推進するリーダーの存在が待ち望まれますね。

 

 

武井:そうなんです。現在、65〜74歳で要介護の認定を受けた高齢者は3.0%、75歳以上では21.9%となり要介護認定を受ける高齢者が増大します。しかし、75歳以上でも78.1%の高齢者は、今現在は介護が必要でない方であり、これらの高齢者のフレイル・介護予防がますます重要となります。


また、急性期医療から在宅歯科医療にスムーズに移行するためには、地域の在宅歯科医療連携室や歯科医師会、歯科医療機関等に情報提供を行い、連携強化を図るなど、急性期から回復期における医科歯科連携、および退院支援等の連絡・調整を担当するコーディネートの役割を担う歯科衛生士への期待が高まっております。

 

ロズリン:歯科衛生士が地域にどんどん出向いて行って、訪問ケアができるような状況が理想ですね。

 

 

住民や患者さんの役に立つ活動を心掛けたい

 

ロズリン:武井さんは放送大学でも学ばれているんですね。何を勉強されたのですか。

 

武井:教育学と心理学です。歯科衛生士教育では、これらの教育が不足していると思ったからです。歯科衛生士の歯科保健指導や健康教育においては、行動変容に結び付けるための支援が重要です。そのための理論や考え方が重要となります。口腔ケアにおいては、いくら効果的な方法を研究しても、人がそれを受け入れ行動に移さなければ効果は現れません。いかに人に行動変容を起こさせるかが重要なのです。

 

 

行動変容といえば、宮古島に素敵な例があります。数年前、文部省の科学研究費を獲得して、口腔機能を高めることで認知症予防になるという実証研究を行ないました。

 

住民に協力して頂き、口をヽ安Α↓入口(咀嚼)、1(飲み込み)、だ響歉況の4つに分け、どこが弱いかをチェックします。次に、弱い部分の機能を高めるプログラムを紹介し、それを実践してもらいます。数ヶ月後に再びチェックすると、機能や状況が改善されていることに気づき、さらに続ける意欲が湧きます。

 

このように、こちらの働きかけ方次第で、住民の行動が変わってくるのです。後にこの研究は、住民からこんなに良いプログラムは、研究が終わっても自分たちで広めていきたいと声が上がり、住民が住民に広げていく活動として引き継がれています。

 

ロズリン:すばらしい活動です。プログラムの内容もそうですが、参加者が自ら取り組み継続できる仕組み作りも重要だと感じます。

 

武井さんは毎日忙しくご活躍されていますが、仕事を離れて何か楽しみはありますか。

 

 

武井:ゴルフが好きで、以前は月に2回ほどコースを回っていました。でも、日本歯科衛生士会の会長になってからは、殆ど行けなくなってしまいました。また少しずつでも始めたいです。

 

ロズリン:あら、私もゴルフは大好きです。ぜひご一緒しましょう。

 

武井:ありがとうございます。あと、ワインが好きなので、飲ミュニケーションもぜひ(笑)。

 

ロズリン:こちらこそ。ぜひ今後とも、公私共々よろしくお願いしますね。

 


<感想>

オーラルケアの中でもサンギはセルフケアに特化した商品を提供していますが、武井さんは、日本の歯科衛生士がこれまで以上に生活者に寄り添った歯科医療・保健を推進することが重要と考え、その実現に向けてとても大きな活動をされています。初めてお会いした時から、とてもエネルギッシュな方だと感じていましたが、インタビューで詳しくお話しを聞くと、想像以上の活動をされていました!

 

“全身の健康はお口から”ということが一般的に言われていますが、やはり超高齢化社会において歯科業界が貢献できることは、まだまだあると感じています。これからの武井さんのさらなる活動に期待しています!サンギも負けないように頑張っていきます。

 

 


 

<武井典子先生プロフィール>

 

【略歴】
長野県 生まれ
1980年 東京医科歯科大学歯学部付属歯科衛生士学校卒業
1980年 ライオン(株) 口腔衛生部入社
1994年 ライオン(株)退職、財団法人ライオン歯科衛生研究所入所
2001年 放送大学教養学部卒業
2005年 新潟大学大学院医歯学総合研究科修了
2009年 日本歯科衛生学会会長(2015年まで)
2015年 日本歯科衛生士会会長

 

【現職】
博士(歯学)、介護支援専門員 
公益財団法人ライオン歯科衛生研究所 研究開発室 副主席研究員
公益社団法人日本歯科衛生士会会長 
日本歯科審美学会副会長、日本口腔衛生学会理事

 



Profile

日本で人生の半分以上を暮らし、動物(特にネコ)と自然、最近はゴルフも愛する、心優しきオーストラリア人。
ワインなら何杯でも?いける口です♪

Categories

Search

Calendar

      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< September 2018 >>

LINK

Archives

Others

Mobile

qrcode