Interview

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日本歯科衛生士会会長 武井 典子さん 前編

 

高齢化の進展に伴い、地域包括ケアシステムの構築が急がれている。在宅療養者や要介護高齢者の口から食べる機能を維持し、低栄養や誤嚥性肺炎を予防する等の口腔管理を担当する歯科衛生士の役割に期待が高まっている。その対応に向けて奔走する日本歯科衛生士会会長の武井典子先生、公益財団法人ライオン歯科衛生研究所の副主席研究員でもある彼女とは、歯磨工業会を通じて知り合い、意気投合。嬉しいことに今回のインタビューが実現しました。

 


歯科衛生研究に携わり、この世界にのめり込んだ

 

ロズリン:武井さんは日本歯科衛生士会会長の他、財団の研究員や学会の理事等、いくつもの重要なお役目がありますね。いまは、具体的にどのようなお仕事をされているのですか。

 

 

武井:日本歯科衛生士会では、入院患者の口腔機能管理の充実とともに、在宅療養者や要介護高齢者等の口から食べる機能を維持し、低栄養や誤嚥性肺炎を予防する等の口腔衛生管理・口腔機能管理に向けた人材育成に力を入れております。

 

さらに、フレイル(活力低下)予防を目指した介護予防事業を推進できる歯科衛生士の人材育成にも注力しています。同時に、歯科衛生研究を通じて、その取り組みを支えるエビデンスの構築に努めています。

 

ロズリン:もともと歯科衛生士に興味があって、このお仕事に就かれたのですか。

 

武井:ドキッ。たまたま数学が好きでしたので、単純に数学の先生になりたいと思っていました。母に勧められて大学受験の間に受験したのが東京医科歯科大学歯学部付属の歯科衛生士学校(当時)。合格したので入学しましたが、実はあまり興味が持てませんでした(笑)

 

 

1年経ったところに「辞めたい」と思い指導教官に相談、「あと1年頑張って、国家資格を取ってから考えなさい」と助言され、そのまま残って歯科衛生士の免許を取り、就職先まで紹介頂き、現在の研究所へ。


最初は、むし歯の洪水時代を背景に、母子歯科保健活動や学校歯科保健活動を行っていたのですが、マンネリ化。たまたま、名古屋支店にチーフとして転勤、そこで、愛知学院大学の先生方の指導でパブリックヘルス分野の研究をスタートしました。


たとえば、お茶の産地ではフッ素の入ったお茶をよく飲んでいるのにむし歯が多いのはなぜだろう?と疫学調査をスタート。夜、お茶を飲みながらお菓子を食べている子どもにむし歯が多いことが判明。データに基づいた歯科保健活動でむし歯が減少しました。
このようなエビデンスに基づく活動とその評価を通した研究の面白さに目覚め、わからないことを知りたくて、夢中で研究を続けました。


実は当時、すでに結婚していたのですが、6年間も東京と名古屋で別居婚だったんですよ。

 

ロズリン:まあ! 理解のあるご主人ですね。

 

 

武井:主人には迷惑をかけました。その後、東京の研究所へ戻ることができ、今度は、恩師にもご指導を頂きながら、高齢者を対象とした研究を進めることになりました。

 

 

高齢化社会における歯科衛生士の役割に期待!

 

ロズリン:研究が好きなんですね。どんなテーマがあるんですか。

 

 

武井:歯科衛生分野の研究は、とても奥が深いんです。自然科学、社会科学、人文科学と多岐にわたります。

 

たとえば、「清拭よりも清掃が有効」、「義歯洗浄剤の効果的な使用方法」を研究するのが、自然科学的な研究。それらの方法を大勢の高齢者に多職種と連携して効率的に広げるための方法論を研究するのが社会科学的な研究。さらに、その結果、高齢者の生活にどのような貢献ができたかを評価する人文科学的な研究です。歯科衛生研究としては、どれも大切です。

 

ロズリン:なるほど。興味深いです。

 

武井:現在、口腔ケア用具を実際の生活の中でどのように活用することが有効であるかについての研究はあまり進んでいません。だからこそ、口腔ケア用具を発売している企業の皆様と連携し、口腔ケアの有効な方法を研究し、その結果を高齢者や多職種の皆様に自信をもって広めて行きたいと考えています。それが、これからの歯科衛生士の重要な役割だと思っています。

 

ロズリン:そもそも一般の歯科衛生士は、どんな仕事をしているのですか。

 

 

武井:現在、歯科衛生士の90%以上が診療所に就労しています。しかし、高齢化の進展にともない、地域包括ケアシステムの構築が急がれる中、歯科衛生士も診療室から地域に出て多職種と連携しながら、その専門性を発揮することが期待されています。

 

今まで、診療室に来院していた患者さんが、介護等が必要となり来院できなくなっても、地域で口から食べる機能を維持して低栄養や誤嚥性肺炎を予防できるよう、患者さんの生活に寄り添った歯科医療・保健が推進できることが大切です。

 

ロズリン:歯科衛生士の役割はどんどん拡大しているのですね。次回は、それに対応できる歯科衛生士を育成する制度について、教えてください。

 

<武井典子先生プロフィール>

 

【略歴】
長野県生まれ
1980年 東京医科歯科大学歯学部付属歯科衛生士学校卒業
1980年 ライオン(株) 口腔衛生部入社
1994年 ライオン(株)退職、財団法人ライオン歯科衛生研究所入所
2001年 放送大学教養学部卒業
2005年 新潟大学大学院医歯学総合研究科修了
2009年 日本歯科衛生学会会長(2015年まで)
2015年 日本歯科衛生士会会長

 

【現職】
博士(歯学)、介護支援専門員 
公益財団法人ライオン歯科衛生研究所 研究開発室 副主席研究員
公益社団法人日本歯科衛生士会会長 
日本歯科審美学会副会長、日本口腔衛生学会理事



Profile

日本で人生の半分以上を暮らし、動物(特にネコ)と自然、最近はゴルフも愛する、心優しきオーストラリア人。
ワインなら何杯でも?いける口です♪

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